和漢廿四孝(柳下亭種員撰・房種画)・16 信濃孝子
信濃の孝子。
「早稲田大学図書館古典籍総合データベース」より
信濃孝子(しなののかうし)
信州の住人何某とかやいへる人 男子をまうけ妻世を去りしかば 都より後妻をむかへたりしに この妻かねてかたらひし男ありて 折々都より文を通はせけるを夫聞き知り ひそかにその文を 探し求め 我が身はものを得書かざりければ 戸隠山へ手習にのぼせおきたる我が子を呼び寄(よせ)この文を読まするに かの児(ちご)継母の罪を救はんと ことなきものに読みなし 父が怒りをとどめければ 母その志しに恥ぢ 夫(それ)より行ひを改ためぬとなん 母 ちごによみておくりし歌
〇信濃なる 木曽路にかけし 丸木橋 文みしときは あやふかりしを
返し
〇信濃なる 園原にしも 宿らねど 皆ははき木(帚木)と 思ふばかりぞ
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長野の園原というのは星の綺麗な阿智村にあるんでしたよね。そんな澄んだ美しい星空とは無縁の話。
後妻が他の男と手紙のやりとりをしているようで怪しい。そこでお父さんはひそかに一通見つけて保管した。けれど、このお父さんは字が読めない。そこで、戸隠山で勉強している息子を呼び戻して読ませようと疑惑の手紙を見せたところ・・・。息子は仰天、真っ黒でした~っと。
でもこの親孝行な(?)息子は「お母さんの実家からの手紙だよ。紅葉が綺麗だから見においでって」とかなんとか即興でテキトーなこと読み上げたんでしょう。「勧進帳」みたいですねっ(弁慶に怒られそう)。そうかそうかと安心する気の毒なお父さん。
襖の奥では悪い妻がハラハラと様子をうかがっていますが、子供の機転に救われました。継母にいじめられそうになったら「本当のこと言っちゃうぞ」と脅せばOKですね。