コツコツ古典

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絵本和漢誉(えほん わかんのほまれ)

さて再び英雄ものの本に取り掛かります。

葛飾北斎の三大武者絵本、「絵本和漢誉」「和漢絵本魁わかんえほんさきがけ」「絵本武蔵鐙えほんむさしあぶみ」のひとつ、「絵本和漢誉」です。「絵本和漢誉」の登場人物は60人くらいいるのかな?

天保六年(1835)に下絵が描かれ、嘉永庚戌(三年)(1850年)に出版されたそうです。売れたんでしょうね~。

 

北斎 画狂老人卍筆 画本和漢誉
嘉永庚戌孟春新鐫 江都東昌軒発行

「和漢絵本誉」国文学研究資料館所蔵 クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス CC BY-SA

古(いにしへ)に云(いふ)。書は言(こと)を尽さず。言は意を尽さずといへり。
今これを譬(たとへ)ば。草木鳥獣の形状を。いかに精(くはし)く書しるすも。
はた言(ことば)を尽していひ釈(とく)とも。
その写生(しやううつし)をただ一目見るにはしかじ。
かかれば軍物語に。つはものの出立(いでたち)をいへるに。物具のしなじな。
そのありさまはしかじかと。詳にありともよむ者大略を思ひやるのみにして。
その意を尽すに至らず。いでやはつかに此一巻をひらき見んには。
漢(から)に和(やまと)に。いにしへの誉ある人々の戦ふさまを。
まのあたり見る心ちぞ せらるる。
猶かつ画狂老人の筆の巧には。
健(たけ)きもののふのうごき はたらくばかりにこそあれ。
嘉永三とせ卯月日。山崎美成しるす 

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いくら文章で詳しく表現しても、パッと見て理解できる絵の表現には敵わない。北斎の筆にかかれば、いにしえの戦う英雄たちがまるで目の前で動き出すようだ・・・と山崎美成さんが絶賛してますね。

わかるわかる~。保元物語平家物語のような軍記物を読むと、武士の服装を詳しく書いてくれているものの、現代人にはイメージしにくい。江戸時代でも既にそうだったのね(笑)

「褐の直垂に、黒革縅の鎧着て、五枚甲の緒をしめ、黒漆の太刀を帯き、二十四さいたる黒ほろの矢負ひ、塗籠籐の弓に、好む白柄の大長刀取り副へて・・・」と言われましても、直垂ってどんなんだっけレベルの身にはその雄姿がおぼろげにすら浮かんでこないのであります。

それを北斎先生がわかりやすく絵に表して下さるなんて。ありがたいことでございます。

右側の男の子。両手両足、さらには口にまで筆を咥えて計五本の筆を駆使して自由自在に題字を書いてます。「五筆和尚」と呼ばれた弘法大師はこんな格好で書いてたんでしょうかね。筆が五本って、かえって書きにくいとしか思えませんが。アクロバット書道。