コツコツ古典

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絵本故事談 巻之五・2 源頼光

二人目は源頼光多田満仲の息子さん。

早稲田大学図書館古典籍総合データベース」より

源頼光(みなもとのらいくはう)
頼光は満仲の長子にて智勇を以て世に顕る 一条院の御宇に
摂津守に任し鎮守府将軍たり 
曽て舎弟頼信の宅に赴き 厩に一人の童子を縛し置たるを見て
問ていはく 彼何者ぞと 頼信こたへて鬼同丸なりと
頼光のいはく か程の剛の者を如斯(かくのごとく)のいましめにては
詮なかるへしと 頼信さる事なりとて金鎖を以てつよくいましめ
脱(ぬけ)かたくしたためられたり 鬼同丸これ頼光の所為なりと
深く恨めり かくて盃酌たけなはになり 夜いたく更けれは
頼光終に一宿せらる 鬼同丸いましめの縄鎖を踏切て
頼光の寝所の天井の上に飛移り 板を引はなち 落かからんと計たり
頼光はやく悟て渡部の綱を召て 屋の上騒(さはかし)用心すへしと
夜明は鞍馬山に参詣すへきむねを命せらる
鬼同丸是を聞て爰に本意を遂ることかたしと天井を飛下
鞍馬山の中道市原野に往て大なる牛を殺し腹をひらきて其中に隠て
相待(まて)り 頼光早朝に装束し綱 公時 定通 季竹等を供として
市原野に至り牛あまた有を見て人に牛追物(うしをふもの)射よとて
四天王の面々思ひ思ひに牛を射る 
綱いかか思ひけん 斃(たふれ)たる牛の腰に矢を放つ時
死たる牛動(うごき) 中より鬼同丸踊りいで 刀をぬきて頼光に
打かくる 頼光騒かす 太刀を以て鬼同丸か首を打落されたり
その首頼光の馬の「むなかひ」=「靷(むながい)」に喰付て
死しけるとなん

又頼光 江州伊吹山にて盗賊の大将酒天童子といふものを退治有しことあり
世俗に酒天童子大江山の悪鬼なりとて夜叉のかたちをゑかくなり

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頼光といえば酒呑童子の話かと思ったら鬼同丸(きどうまる、鬼童丸とも)のお話でした。「古今著聞集 巻第九 武勇」に出てくるお話ですね。

左下に哀れな牛が倒れています。馬に乗っているのが頼光かな。

 

こちらは「北斎漫画」の「鬼童丸 市原野に頼光を窺フ」。殺した牛のお腹の中に隠れて頼光を待ち構えているところですね。

国立国会図書館デジタルコレクションより

「古今著聞集(有朋堂書店)」でも鬼同丸に関しては詳しい説明がなく、いったいどんな人物なのかわかりませんでした。酒呑童子の子という説、もと比叡山の小僧だったけれど追い出されて盗賊になった説などあるようです。