英雄図会(葛飾戴斗1825年)・19 上総之助廣常
「鎌倉殿の13人」では佐藤浩市さんが好演されていた上総廣常。
ARC古典籍ポータルデータベースより
上総之助廣常(かづさのすけひろつね)
桓武帝の後胤 千葉の上総之介忠常の七代 千葉八郎廣常は頼朝卿に
仕へて上総介に任じ保元以後軍功あまたありけるが 寿永年中反逆の
企てあるよしにて鎌倉殿中にて殺さる 全く二心なきこと分明なりしかば
頼朝卿ふかく後悔し給ふとぞ
久寿年中鳥羽院の御殿に一夕院参の公卿管弦の催し御遊有しとき
夜も闌(たけなは)になりて宮中率(にはか)に震動し銀燭のともし火
残らず忽きえける 折ふし院の坐下に寵愛の皇妃玉藻前が惣身より
光明を放ち宮中を照しけるが是より新院御脳あり
安部康成占卜してこれ全く宮女玉藻が所為なりとて祈檀に玉藻を登せて
いのりければ忽(たちまち)化して九尾の狐となり 東国に走(はしる)
依て廣常義明の両士に命し追討せしむ 下野国那須野におゐて射殺し
院の御脳を安全ならしむ 其功莫大なり
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三浦上総の両介 九尾の狐を退治の図
絵本三国妖婦伝 国立国会図書館デジタルコレクションより
「絵本三国妖婦伝」では安房国の住人・三浦介義純(英雄図会では義明)と上総国の住人・上総介廣常の二人が九尾の狐を退治しています。
句読点がなく、文章が延々と続いて読みにくいんですが、それでも話の面白さに引き込まれました。中国から日本に渡り、美貌と才覚で世を乱して回る九尾の狐。登場するメンバーの顔ぶれも豪華。妲己、紂王、太公望、班足太子、華陽夫人、悉達太子、耆婆、阿倍仲麻呂、吉備大臣、安部泰親、鳥羽院・・・。各人のエピソードが話の中に折り込まれているのが面白かったです。
九尾の狐は中国から日本にどうやって来るのかな、と思っていたら唐に渡った吉備大臣が日本に帰るとき、ちゃっかり船に乗り込んでました。密航なのに大目に見られるから美人は得ね。