コツコツ古典

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絵本故事談 巻之五・12 那須与市

はるか海上の扇を射ち落した弓の名人、那須与市。内海とは言え、多少は波で揺れたでしょうにね。

早稲田大学図書館古典籍総合データベース」より
那須与市(なすのよいち)
那須の宗高は下野州の人なり 射を善くするを以て其名発す
元暦の兵乱に義経に従ふ 八嶋の合戦の日 平家の陣より
美女をして舩の上に出して扇を挙て源氏の兵にこれを射ることを
請しめたり ここにおいて義経衆軍と其能者(よくするもの)を議(はか)る
僉(みな)いふ 宗高可(よから)んと 義経命て是を射さしむ
宗高則扇を射て是を海中に落す 源平の軍兵皆感嘆す
誉を一時に施し 芳を千歳に流せり

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こちらが挿絵。左ページには矢を射たところの与市の勇姿。

 

そしてこちらが右のページ。中央の赤い丸の中には扇の的を射た矢。左の丸には射られた扇。右の黄色い丸はたなびく旗が風向きを表しています。

扇は風に乗って左の方向へ飛んで行ったようです。名手とはいえ、こういう代表って荷が重いでしょうね。外したら仲間の士気ダダ下がりになるの見えてますもんね。

船の上で長刀持っている男の人は誰かしら、と義経記を読み直したら、与市が扇を射抜いて源平両軍大騒ぎになったとき、船の中から登場した50がらみの男性。

「黒革縅の鎧着たるが、白柄の長刀杖につき、扇立てたる所に立って、舞ひすましたり」

おじさんはいい気持ちで舞い始めたところ、直後に容赦なく与市に射られて倒れてしまいました。調子に乗っちゃったのねー。