コツコツ古典

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金縹題名将手鑑 上之巻・3 平忠度と岡部六弥太

軍記物に登場する武将は文武両道な人がよく登場しますが、平忠度もその代表格の一人ですね。取っ組み合いしてる右側の人が忠度卿。左側で顔が見えないのが岡部六弥太忠澄。

〇平家の貴族薩摩守忠度卿は和歌の上手にましまして 俊成卿を師として
和学に秀で給ひしは世の人の知るところなり


一門一ノ谷の合戦に西海へ皆走るを見て始終(意味…最後、終わり)の負け戦と察しければ
その身一人覚悟をきはめ踏みとどまつて源氏と戦ふ事幾たびといふ限りを知らず 
手傷を数多負ひながら此日もすでに暮れ果てて 気は疲れ 馬動かねば
徒歩立ちとなりて磯伝ひに一人落行く後ろより 源氏に名を得し武蔵の国の
住人岡部六弥太忠澄といふ者 追つかけ来たりて斬りかかれば ものものしやと
ゆふしほの波打際をさりあへず 太刀抜きかざし打ちあへば六弥太かなはじとや
思ひけん たちまち声かけ いざ組まんと大手をひろげて近づくを
忠度卿はよりもつかせず 手先を持つてあしらひ給ふ


六弥太は一生懸命飛びつきはねつき やうやうにひつ組んで もみあひしが
忠度力勝りしかばたちまち忠澄を取つて捻ぢ伏せ上にまたがり 小太刀を持つて
首をかかんとすれば 忠澄はその手をとらへて はねかへさんと又もねぢあふ
その間ややしばらくなりしうちに六弥太が郎党二人 このところへ走り来て 
近づきたれども 暗さは暗し 両人しばしためらふ所に六弥太声かけ
上なるが忠度なり 討てよ ぬかるな者どもと 聞いて二人の郎党ども
忠度卿に斬りかかれば 忠度片手に忠澄を押さへながら二人の者を片手にて
支へ給ふ 

戦ひ激しかりければ 思はず押さへし手の緩むを 得たりと下より
跳ね返し 六弥太主従三人にて やうやく忠度を討ち取りけり

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一対三なんてずるいわ!