コツコツ古典

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欄間図式(上)・2 夏 沢杜若

夏 沢杜若(さはかきつはた)

The British Museum所蔵
かきつはたは 花の色むらさきなるものゆへに 花を
如此 ほりすかしてもしかるへし
又白きも有ゆへに ひなたはかりも有へけれとも
先はむらさきの花をしやうくはんするものゆへに
かけひなたをまぢへて ほりたるもよろしと見ゆるへし

葉のしべは いくすしなるとも遠目よりもよく見ゆるほとに
葉のふときにしたかふへし
中しべ一筋にしては しやうふのはにまきらはし

あやめ くはんざうのたぐひは 中しへ一つあるをよしとす
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杜若は花の色紫なるものゆへに 花を如此(かくのごとく)

彫り透かしてもしかるべし
又白きも有ゆへに 陽(ひなた)ばかりも有べけれども
先(まず)は紫の花を賞玩するものゆへに
陰陽(かげひなた)を交えて彫りたるもよろしと見ゆるべし
葉のしべ(=葉脈)は幾筋成とも 遠目よりもよく見ゆるほどに
葉の太さに従ふべし
中しべ一筋にしては菖蒲の葉に紛らはし あやめ萱草(かんぞう)
のたぐひは中しべ一つあるをよしとす

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杜若の彫刻テクについて書かれています。

毎年花の時期になるとテレビで取り上げられる、アヤメとカキツバタ、花ショウブの違い。その一つに葉の形があるそうで。杜若の葉は幅広なんですね。

そこで杜若を彫刻する際には、特徴である葉っぱの広さを伝えるために、葉脈は一本だけではなく数本入れましょう、一本だけにすると葉の細いアヤメと紛らわしくなりますよ、ということですね。この絵でも葉脈は2本から4本入ってますね。

また、「アヤメは乾いたところに生えて、杜若は水辺に生える」という違いもあるそうです。この欄間の図案もちゃんと杜若の背景には水が流れています。大変勉強にまりました。