コツコツ古典

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絵本故事談 巻之五・20 新田忠常

タイトルと本文冒頭でいきなり漢字が違っているニッタさん。

早稲田大学図書館古典籍総合データベース」より

新田忠常(につたたたつね)
仁田忠常は豆州の人なり 頼朝興起の始したがつて 石橋山に赴く
又海東にも海西にも戦功を励さずといふことなし 
加之(しかのみならす)曽我の祐成に戦勝 比企の能員を執戮す
嘗聞ふ忠常頼家の旨を承て富士の巌穴に入 俗に人穴と云ふ
従者皆死し忠常 独(ひとり)命を全して還ると 又いはく忠常
頼朝に富士の狩に従て野猪の猛く忿れるを拘へて刺殺と
世に図する うしろさまに猪にまたかりたる図これなり

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忠常が富士の人穴を探検したお話、曽我物語と北條九代記に出てきます。こちらは「鎌倉北條九代記」の該当部分。

国立国会図書館デジタルコレクションより

これを読むと、仁田忠常が富士の人穴に入る前に和田胤長さんという人が
6/1に将軍源頼家卿の命で伊豆の洞窟に入ったんですね。
その洞窟の奥深くには大蛇がいて、胤長を飲み込もうとしました。
胤長は勇敢にも太刀で大蛇を斬り倒しましたが、大蛇が倒れて道を塞いだため
それ以上奥には行けずに引き返しました。
その報告を聞いた頼家卿は胤長が洞窟の一番奥まで見届けなかったことに不満そうでした。

その二日後の6/3に将軍一行が今度は富士へ狩に行ったとき、富士の人穴の奥を見極めてくるように仁田忠常に命じた、とのこと。忠常は頼家から御剣も賜り、主従6人で洞窟へ。
洞窟の中は黒いコウモリ、白いコウモリが飛び交い、蛇が足にまといつき、
氷のように冷たい激流の河が流れていました。

川のはるか向こうには輝ける神仏らしき存在がありました。それを見た途端、郎従4人は倒れてしまいました。忠常が頼家から賜った御剣を川に投げ込むと不思議な存在は姿を消し、忠常と郎従の一人だけは辛くも生き延び生還することができました。

忠常からその報告を受けた将軍頼家はますます興味を示しました。あらためて舟を用意させて、多くの人を洞窟のさらに奥へ向かわせよう、と考えたのでした。古老たちは「この穴は浅間大菩薩の住まわれるところだから中へ入るべきではないのに。戒めを破ればきっと将軍様に災いが起こる」とささやき合ったのでした。その後将軍のまわりでは怪異なことが相次ぎ、7/20、頼家は急病になりました・・・。