コツコツ古典

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絵本故事談 巻之五・26 小山田高家

戦の際、新田義貞に従って播州へ向かった小山田高家。地元民の農地を荒らさないよう義貞が軍隊にお触れを出したにも関わらず、高家は飢えた兵士たちのために青麦を刈って食糧としてしまいました。

早稲田大学図書館古典籍総合データベース」より

小山田高家(おやまたたかいゑ)
延元元年新田義貞 軍を帥(ひき)ひ 西の方を征し
播州に赴く 預(あらかじめ)軍中に約令し 其禁制を一木板に書し
これを道の傍に建ていはく 
叨(みだり)に田麦を刈採 民屋を犯凌者あらは罪に抵(いた)らんと 
是を以て軍の過る所 耕をすてず商市を止めす 
時に義貞の部将小山田の高家といふ者 潜に田隴に行 其青麦を芟
是を鞍馬に駄て 其軍営に入る 長濱の某たまたまこれをみて高家
くはふるに令を侵の罪を以てせんと欲す 義貞これを聞ていはく 
高家豈其身をすこしの青麦に代る者ならんや 思ふに其意 其侵所の
地を以て誤て敵の軍境とするか さなくは兵食すでに罄(つき) 糗糧を
つづくることなき故を以て士卒の餓か為に自 法を忘るか 是におゐて
人を遣して其陣所を点検せしむ 果して粮食なし 唯馬と軍器のみあり
義貞みづから大に愧ていはく高家か法を犯すは果して饑卒の為に
自其罪を忘るなり 夫士卒をは疲苦ること此の如くに至らしむるは
将の恥にあらすや 勇士をは失ふへからす 軍法をは乱るへからすと
衣二襲を以て其田主に与へて是を謝せしめ 又粮穀十石を高家に賜はつて
以てこれを賑せり(賑わす・・・物を与えて元気づける) 
高家倍(ますます)其恩情を感じて後義貞の命に代りて死す

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高家を信頼していた新田義貞は「これは兵糧が底をついたのではないか」と思い、

高家の陣を調べさせたところやはり食糧がありませんでした。義貞は自分を恥じて

麦畑の地主にはお詫びに着物を贈り、高家にも食糧を届けたとのこと。

高家は厚恩に報いて、義貞が討たれそうになったときに自分の乗っている馬を義貞に渡し命を救い、自分は徒歩となり戦死しました。

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