コツコツ古典

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金縹題名将手鑑 下之巻・15 巴御前

今井四郎の妹、巴御前。美人かつ勇猛。今井四郎と樋口二郎、義仲四天王の二人を兄に持つ巴。最強兄妹ですね。

国立国会図書館デジタルコレクションより

木曽中三権頭兼遠が娘 今井の四郎兼平が妹 巴御前は朝日将軍義仲公の
思ひ者なり 容顔美麗にして心優しく勇敢ぶりよく類なし 
ときに元暦元年 木曽と鎌倉勢と戦ひしが 時運尽きて木曽方討ち負け 
勇臣ら別れ別れとなりて 巴は一人義仲公と兄の先途を見届けて討死せばやと
思ふのみ 追ひ来る敵を討ち払ひ 斬り払ひつつ 近江路なる粟津ヶ原まで
来にけるとき 内田の三郎といふ大功の者 討つてかかるを事ともせず
巴は やにはに引組んで内田が首を捩ぢ切つて 大地へはたと投げ出したり
此勇猛におそれけん 近づく者もなきところに 和田左衛門義盛 追ひ来たれば
巴はありあふ立木の松を根こぎにしつつ 打ちかかるを義盛 両手に
これを受け止め 互ひに捩ぢあふ大力戦は前代未聞と あたりの士卒ら
舌を震つて見物す そのときはるかに木曽殿も今井の四郎も討死と
罵る声々してければ 巴ははつと力たゆみて たぢろく所をつけ入つて
義盛つひにいけどりけり かくて戦果ててのち 巴が勇敢の種を得んとて
義盛乞ふて巴を娶り朝比奈の三郎を生ませしとぞ

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