コツコツ古典

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金縹題名将手鑑 下之巻・16 義経と教経

義経の八艘飛び」で有名な場面ですね。

国立国会図書館デジタルコレクションより

九郎判官源義経公はその才知凡人ならず 謀すべて図に当たり
一の谷 鉄拐が峰の逆落としに平家は一戦にも及ばず 
ことごとく船に取乗り波に漂ふ 

その折から讃岐の国八嶋壇の浦の舟戦に義経自ら軍船を指揮して
おはしけるに 能登守教経 義経の面は知らざれども 良き鎧を着たるを
もつて 大将ならんと心にうなづき その身は戦ひ数度にして鎧は千切れ
大童になりて 手取りにして ともに入水せんと 義経の舟に飛び乗れば
義経は一早く他の舟に移り給へば 教経櫂を取つて打ちつくるを義経太刀にて
切り折り給ふ 
教経はますます猛り 舟七艘まで追つかけしかど
なほ追ひつかねは はづみをなし立板を取つて又投げつくれば 義経は後ろさまに
八艘目の伊勢三郎が舟へひらりと飛び乗り給へば教経も続いて乗らんとせしに
その舟遠く隔たりしかば空しく義経を睨まへて 舟の舳先へ突つ立つたる

折から安芸太郎二郎といふ二人の者 討つてかかるをひつとらへ
両脇へ掻いこんで 海底へざんぶと飛び入り入水なしける教経の
そのありさまこそいいさましけれ

「鎧はちぎれ 大童(ざんばら髪)になりて」戦う平家のお坊ちゃま教経。