コツコツ古典

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金縹題名将手鑑 下之巻・18 梶原景季

謡曲「箙」の人。箙に梅の枝を挿して戦った粋な景季。

国立国会図書館デジタルコレクションより

ここに梶原平三景時が嫡子 源太景季は人に勝れし功名をせんとて
生田の森の敵陣なる一の木戸を一番乗りして味方の勢を繰り込みたり
馬もすでに乗り倒し徒歩立となつて血に染みたる大太刀を振り回し
平家の従兵ここを先途と守りゐたる二の木戸へ なほも進んで切り入る
勢ひ阿修羅王の荒れたる如く 支ゆるものを薙ぎ立つれど
平家はこれを切所にささへて新手を入れ替へ防ぐにぞ
景季は又一の木戸へ 思はずも追ひ出ださる こは残念と又切り入るに
指物も切り折られて見苦しとて かたへなる今を盛りと咲く梅の枝
折り取つて箙に指す (そくちも?) 香ばし梅花の指物 再び二の木戸へ
切り入つて敵を討つこと数を知らず 此功名を梶原が生田の森の二度の駆けと
世には語り伝へたり
此景季は和歌にも秀で 頼朝公信濃なる浅間にて御狩の時夕立ちして
止まざりければ 
〇昨日こそ あさまは降らめ 今日はまた みはらし給へ 夕立の神〇
と源太が詠みし 此の歌にて雨立所に晴れしとなん

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夕立が止んで晴れるようにと願いを込めて景季が歌を詠んだら、雨がピタッと止んだとのこと。夕立なんて大抵すぐ止むじゃん、とかそういうこと言ってはいけませんね。